テキ屋でバッタ物を売らせると、口八丁手八丁で才能を発揮する私です。嘘の様な本当の話。

人には誰にも言えない、過去が幾つかありますね。私なんか、人様に言えない“真っ黒な過去”がたくさんあるのです。 真っ直ぐに生きて来た方たちには、恐らく、信じて貰えないような驚くような出来事です。

幾つかお話してみましょうかね。。。

ちなみに、全て実話です。。

この話を読んで、“自分は大変だと思っていたけど、このオッサンよりましかな。。。”と少し楽になって貰えれば嬉しいです。

だいぶ前の話なのですが、友人と二人で不動産のチラシを専門に制作する会社を作った事があります。 チラシのデザインに必要なマックのデスクトップが物凄く高かった時代です。 Illustratorのバージョンは、まだ、5.0です。今の若い方には信じられないかもしれませんが、何枚もフロッピーディスクを取っ替え引っ替えしながら、インストールするのです。

 

自動車修理工場の端を間借りして、プレハブを立て、オフィス代わりにしていたのですが、ゼロックスの営業さんが出入りしていました。 確か、松田さんと言いましたね。

 

松田さんの顧客で、大成功した方がいて、海外から輸入した商品の写真をとり、リストを作ったり出来るスタッフを欲しがっているとの事なのです。 私、写真なら撮れますし、マックに取り込み、切り抜いたり、デザインも出来ます。。。 と言うことで、松田さんに、先方の会社に連れて行ってもらう事にしました。

 

埼玉県の川越と言うなのですが、国道沿いに、大きな倉庫と社屋があります。 駐車場には、4t、2tトラックにワンボックス、あと、こんなにデカイ2ドアのメルセデスあるの?と言う白いベンツが停まっていました。

 

松田さんに社長さんを紹介して貰いました。 本名を出すと、今でも非常にまずいので、“Aさん”としましょうかね。 物腰が柔らかく、小柄で紳士的な方でした。 松方弘樹さんを、ちっちゃくした感じです。

 

写真も撮れるし、マックも一通り使えると言うことで、即採用になりました。 給料も良いのです。

 

この時には気づかなかったのです。Aさんの身体的特徴を。。。

 

紹介してくれた、松田さんの話では、大型のスーパーや百貨店で催事を開き物を売るらしいのです。

入社して、ラクが分かってきました。。。

地方の大型のスーパーの催事場を3日ほど借り切り、ガラスケース、商品を持込み会場を設営して、商品を売ります。

 

“質流れバーゲン”

 

ニュースなどでも、鉄道の忘れ物を格安で売る様なバーゲンを時々見かけますね。

 

Aさんの会社の商法は“質流れバーゲン”なのです。 ただ、売り場の中にある質流れ商品は数点のみです。それも、わざわざ、質屋で購入してきたものです。

 

私もこの商法を考えた“Aさん”頭い〜なーと思いました。 そのカラクリです。。。

 

例えば、とある地方都市のスーパーで、3日間、催事を行うとします。 事前に、商圏内に大量の新聞折り込みチラシを配布します。 “質流れバーゲン開催!!”

B4のチラシなのですが、目玉商品が2点あります。

ルイ・ヴィトンのキーケース5,000円!

ROLEX50,000円!

都内であれば、ヴィトンでも、ROLEXでも直営店がありますし、大黒屋などの店でも売っています。 ただ、地方のオバちゃんたちにはヴィトンなど、珍しいのですね。 チラシに掲載されている商品もモノグラムのキレイなキーケースです。

 

催事の初日には、大抵、開店前に行列が出来ます。 キーケースもROLEXも“限定1名様限り”ですからね。

 

絶対に、オラが一番乗りして手に入れてやるべー!と気合イッパイで、開店時間を待っているのです。

 

さて!開店と同時に、催事場めがけて、オバちゃん達が猛ダッシュでやってくるのです! これは、何度体験しても、鬼気迫るものがありますよ。

 

ガラスケースに体当たりして、やっと、ストップしたオバちゃんの開口一番“るいびとんのキーケース!” 対峙するのは超ベテランのオバちゃんです(私はこのオバちゃんにとても気に入られていた)ショーケースから取り出したキーケースは。。。写真に写っていた表側はキレイなのです。 ただ、裏返すと、真っ黒に焦げているのです。(今、思い出しても、あまりにも無茶苦茶で吹き出してしまいました)

 

このキーケースはAさんの甥っ子である、部長さんがルイヴィトンのショップに行って新品を買ってくるのです。 そして、ライターで炙って、裏側をズルズルにするのです。

 

ベテランのオバちゃんは、お客さんに“表はキレイなんだけどね〜裏側が焦げているのよ〜”(ライターで炙ったのだから当たり前) とても良く似たデザインの商品が“これ”だけど、こっちの方がい〜わよ〜。。。と言葉巧みに、中国から格安で仕入れたバッタモンを売りつけるのです。 本当に稀ですが、焦げていても買いたい!と言うお客さんもいるのですが、売ってしまうと、又、高いお金を出して新品を仕入れなくてはいけないので、絶対に、買わない方がい〜わよ!買っちゃダメ!なんて、無茶苦茶な事を言っています。

 

ROLEXはもっと笑えます。

先程と同じく、オトウチャンにプレゼントでもするのでしょうか。。。お母ちゃんが“チラシにあった、ROLEX頂戴!”と駆け込んできます。 おもむろにショーケースから取り出したROLEXは何故か?ビニール袋に入っています。

チラシでは、ピカピカのデイトジャストなのですが、出てきた時計はベルトが無く、秒針も外れてしまっていて、振ると中でカチャカチャと動きます。 これも先程と同じです。

実はこれ、“部品取り用”なんですよ〜と言って、ロレックスそっくり(ほぼコピー)のバッタモンを高く売りつけるのです。

 

写真を撮り、商品管理担当も私年末年始の書き入れ時は売り場に出るのですが、馬喰町あたりで買った、ガラス玉の指輪を驚くような値段で売るのが私の役目です。

ベテランのオバちゃん達に仕込まれて、上手に売りましたね〜。

 

だいぶ、遠回りしてしまいましたが、Aさんの身体的特徴に気がついたのは、入社数日後でした。 よく見ると、身体の一部が無いのですね。。。

 

私の場合はスキンヘッドなので、髪の毛が無いってすぐに分かります。 Aさんの場合、数量は人と同じなのですが、ちょっと、短いのです。

 

その。。。

 

指ですね。。。

 

これが、親指や人差し指だったりすると、遠慮しながらも、

“あ〜っ。。。どうされました。。。事故ですか?”

と尋ねることが出来ますが、それが小指だったりすると、口にするのは勿論!見た瞬間に目を反らして“俺、見てないかんね。。”と芝居をしなくてはいけません。

それも、よりによって、第2関節くらいから先が無いのです。。。

やっちまった〜。。。 私は子供の頃から注意力が無いのですね。

ただ、面接に行った時に、社長の小指がきちんと付いているか?確認する人ってあまりいませんよね〜

 

そうです。 Eight-nine-threeの方でした。

 

聞くとお父さんが、地元では有名なテキ屋の元締めなのだそうです。 息子である、Aさんは“質流れバーゲン”を考え、一代の財を成したのですから、まあ、ある意味頑張りましたね。

 

スタッフもユニークと言うか、妖怪の様な人ばかりで笑えましたね。 伸び切ったパンチパーマのSさんと言うこの世に居ない人がいましたよ。 別に幽霊ってわけではないんです。 ただ、住所不定は勿論、免許証、保険証、住民票など、な〜んにも持っていないのです。 これで、トラックを運転して、東日本の催事を担当していたのですから、ある意味凄いですね。

 

こんな猛者ばかりの中で、中退とは言え、私の存在は特別でした。

“え〜!諸川さん大学行ったの!すげー!”

社長からも誘われ、良く飲みに行きましたね。

 

必ず、一軒目はBARで、ウイスキーを飲むのですが、私も調子に乗ってストレートでカパカパ飲むので、眼の前の社長の小指が無い事も忘れて酔っ払ってしまうのです。

一度、“諸川クン、運転してよ。” と言われて、真っ白のデカイベンツを運転したのですが、こっちは、ヘロヘロです。

 

駐車場のコンクリートの柱に激突しそうになったり、調子に乗って、信号無視で突っ走ったり、今、思い出すと恐ろしい事をしていましたね。 隣で社長は“お〜”とか“あ〜”とか言いながら足を持ち上げていました。

 

2軒目なのですが、国道をそれて、草むらの中を走るのです。 そうするといきなり視界が開けて、なんでこんな所に?と言う様な、御殿の様な大きなクラブが出現します。

 

巨大なホールではルーマニアの女性たちが肌もあらわに、踊っています。

ダンスを見ながら、午前0時まで、ガンガン酒を飲み、日付変更と同時に、お目当ての女性を一人連れて、別室に移動します。 なんで、こう言うシステムなのか?今、考えても分かりません。風営法の関係だろうか?

別室と言っても、扉を隔てて隣にあり、怪しいスペースではなく、清く正しくテーブルがあり、女性同伴でお酒を飲むだけです。 毎回、行く度に大きなテーブルがフルーツやおつまみで一杯になります。 この時間になると、何を何杯飲んだか?なんて全く記憶にありません。

 

この店を出るのが、午前2時?3時? これで終わりでは無いのです。。。

 

この店で毎回合流するのが、元マル暴の探偵です。 この人が見た目から話し方から、怪しいのなんのって。。。

 

この探偵と一緒に車2台で高速?をぶっ飛ばし、何故か、草加市に行くのです。 今、考えると、あまりにも常識ハズレで、現実からかけ離れているので、夢だったのか?と思ってしまいます。

 

草加の住宅街の真ん中に、ディスコがあるのです。 二重の扉を開けると、どこからやって来たのか?大量のフォリピン人が踊っています。ステージには生バンドまで入っているのです。 踊るのに邪魔なのでしょうか、社長から、“諸川くん、財布預かって”と渡された事があります。

まあ、その財布の重くて厚い事といったら。。。 スラれたり、落としたりしたら、冗談ではすみませんね。迷わず、ジーンズの腹に押し込んだ事を覚えています。 (ここの記憶は鮮明だな〜。。。と言うことは夢では無いのかな。。。)

 

飲んで、踊って、何時間経過したでしょうか? 閉店と同時に、フィリピン人のお客さんも一斉に外に出ます。 清々しい朝日の気持ちの悪いことと言ったら。。。 出口の前では、軽トラに乗り、割り箸に刺したパイナップルを売っているオジさんが待っていて、当たり前の様に買って、パイナップルを齧りながらフォリピン人達は散っていくのです。 これも、凄い光景ですね。

 

さて、この社長のこの年の12月の飲み代幾らだと思いますか?1ヶ月間ですよ。。。

経理の男の子に聞いた教えて貰った時に吹き出してしまいました。

 

なんと、600万円!

 

先程、書きましたが、私はスタッフの中では高学歴?です。 いつの間にか、色々な相談を受ける立場になっていたのです。

 

給料や社長、仕事に対しての不満の話が多かったですね。

 

何時も、社長は昼前に出社するのですが、その日は、午前10時きっかりにやって来ました。 PCを操作していた私の所にやってくると、“諸川くん、ちょっと社長室まで。。。”

 

社長室に入るなり、胸ぐらを捕まれ、Tシャツを破かれ、引き倒されました。 フイを付かれたので、何もできません。 それから、夕方まで軟禁状態で、やられたのなんのって。。。 アタッシェケースで頭を殴られたり、ベルトで首を締められたり、カッターを首に突きつけられたり。

 

昼なんか、私を目の前に正座させて、一人で美味しそうに弁当を食べているのです。。。

 

この事件?で気がついのですが、こういう場面でも冷静でいられるのですね。私。 どうすれば、この危機から逃れる事が出来るか? 気分が悪いフリをして、トイレで“オエッ〜”って芝居をしたり。

 

こう言う“プロ”の人って、後々、問題にならないように、身体に傷を残さない様に痛めるのですね。 ヤラれながら感心していました。

 

なんで、社長室に呼ばれたかって? 俺に何か隠しているだろう!っと言うのです。

 

何も無ければ良いのですが、実はイッパイあるのです。。。

キレイなスタッフがいるな〜と思ってデートに誘った女性は実は社長の彼女だったり、時効とは言え、とてもブログでは書けないような事を沢山していたのです。

さて、こうなると、社長に“何がバレたんだろう?”とお互いの探り合いです。

結局、丸一日、痛めつけて満足したのか?有耶無耶のまま、開放されたのですが、もし、あの時に“あれ(書けない)”を自白していたら、社長に途中で言われた通り、コンクリートに埋められていたかもしれませんね。

ラッキーでしたね〜

 

・・・・と、長々と書いてしまいましたが、全て実話です。驚きましたか?残念ながら、こんなのは私の人生では序の口なのですね。 もっと、もっと壮絶な経験を沢山しています。 なので、今のホーチミンでの生活が平和で楽しくて堪らないのです。

 

まあ、今、思い返してみれば、笑える思い出です。