全身全霊を打ち込み、身悶えし、燃えるような熱い仕事をしたことがあるか!

Dropboxの整理をしていたら、懐かしい書類が出て来ました。 表紙に日付の記載がありますが、2010年なので、約10年前です。

えっ?まだ、そんなもん? もっと、長い時間が経過した様な気がします。

株式会社Rightと言うのは、私が立ち上げた銀座にあった会社です。

ガラケーのコンテンツビジネスに挑戦したくて、資本金10万円だけ用意して起業しました。

 

会社の登記は「銀座」です。 何でも格好から入ってしまうワ・タ・シ。

 

と言ってもレンタルオフィスです。 レンタルオフィスには2種類あり、「本当に登記の為だけの名義貸し」と、「小さいながらもデスクを置けるタイプの契約」もあります。

私は後者です。

スペースは、畳1畳半程度だったでしょうか? 机と本棚とプリンターを置けば目一杯です。

 

ただ、パーティションは天井まで伸びているので、完全個室で狭いながらも楽しい何とかです。 経費で、ちょっと贅沢なコーヒーメーカーを買いました。 ※これ、何よりも必需品です。 事務所から数分歩くと、その場で焙煎してくれる珈琲豆屋があり、大した仕事もせずにせっせと美味しい珈琲ばかり飲んでいました。

 

当初は、前職から引き継いでもらった僅かな仕事で食いつないでいました。

 

写真事務所で10年間お世話になったせいでしょうか? 「色」について、勘が働き、アパレルブランドのカタログなどの仕事を貰っていましたね。 印刷ディレクターとでも言うのでしょうか。

如何に商品に近い「色」を印刷物で再現するかは、知識と経験が必要です。 ※勿論、ハッタリも必要です!

 

微妙な色のチェックや色校正などは極力「デジタル」を使います。 人の手によるアナログの作業は、その日の様々な要因でバラツキが出てしまい、現時点で何が正解なのか?判断出来ず、的確な修正指示を出すことが出来ないのです。

最終的な色校正でクライアントに「服の色」をチェックしてもらい、知り合いの印刷屋で刷ってもらいます。

出来る限り安い金額で印刷して貰い、私はその金額に20%を乗せていました。

 

これは、54歳になった今でも、全く変わっていないのですが、新しいモノを生み出す事にとても喜びを感じます。 絵心はゼロなのですが、Illustratorを使えば、ロゴマークやパンフレットなど何でもデザイン出来ます。

 

全く「ゼロ」から、何かを作り上げる作業は、書類の処理や経費の計算などとは「脳みそ」の使う場所が全く違います。

 

私は美味しい珈琲を淹れ、MACを前にして「パチン」とその脳みそのスイッチを入れることができます。 このスイッチオンが何よりの楽しみです。

 

株式会社Rightを立ち上げましたが、スタッフなどおらず、私だけですから、うるさいことを言う人は一人もいません。

 

家族の為に最低限の利益は確保しつつ、中央区の喫茶店をウロウロと過ごします。 伊東屋でとても高いノートとちょっと高い万年室を買ってきました。

作家気取りだったのかもしれませんが、喫茶店で珈琲をすすり万年室の硬質な軸を指で転がします。

 

どうせやるなら、この世で唯一のサービスを立ち上げたいです。 基本的に集中力というものは持ち合わせていないのですが、時々「ガーッ」と入り込む時があります。

周りが一切見えなくなり、何も聞こえなくなります。

 

漠然と「この世で唯一のサービス」と言ってもね〜

 

ポイントだけは押さえてあります。 1)その商品(コンテンツ)を利用するターゲットはマスか? 2)既に大手が参入していないか? 3)その分野に熱く接することが出来るか? です。

 

実は、この時既に、ドコモ、Auソフトバンクの3キャリア対応の公式サイト「空手道モバ流」をリリースしていました。 今でこそ、YouTubeでありとあらゆる動画を無料で見ることが出来ますが、当時は、そういう訳にはいきません。 当時、息子と習っていた空手の動画を、何時でも何処でも見られたらい〜な〜と言う気持ちがきっかけです。

 

残念ながらこのサイトでは大して利益は出ませんでした。

 

ただ当時はガラケーコンテンツ全盛期です。 Auソフトバンクは別として、NTTドコモさまさまの公式サイトの審査を通過するのは、本当に至難の業なのでした。

大手制作会社は別ですよ。 審査通過の為のノウハウだって構築されているし、ドコモの審査担当とも顔なじみです。

 

自慢ではありませんが、株式会社Right様は従業員たった一人、資本金10万円です。 当時、世話になっていた、空手の師範に協力してもらい、やっと審査を通過出来たのでした。

 

二匹目のドジョウではありませんが、今度のコンテンツは自分の頭でゼロから考え、形にしたいのです。

 

さ〜てと。。。 どんなジャンルで、どんなガラケーサイトを立ち上げたら良いのだろうか?

 

実際には記憶が曖昧なのですが、その時、伊藤園の「おーいお茶」のボトルでも目に入ったのでしょうか? パッケージには「俳句」が印刷されています。

 

俳句だったら、圧倒的な数の愛好家がいます。

 

おっ!これはコンテストとして成り立つのでは?

 

ただ、俳句と言えば、私の中ではお年寄りの娯楽・文化です。 でも、伊藤園のサイトで調べてみると・・・毎年開催される「おーいお茶の俳句コンテスト」には、160万を超える句が集まり、小中高生が9割を占めるとあります。

 

おっ!これはイケるかもしれません。

空手は自分でもやっていたので、データを提供してくれる会社や、空手団体も察しも付きました。

 

ただ、俳句はね・・・・

 

強力な助っ人が必要です。 俳人と言う人です。

 

Webで調べてみると、俳句の世界には「現代俳句協会」と「伝統俳句協会」と言う大きな団体があります。

紹介してくれる人でもいれば良いのですが、そう都合良く話しは進みません。

 

とりあえず、行ってみるのです。

 

これまた記憶がおぼろげなのですが、両団体ともマンションの一室です。 伝統俳句協会のオフィスは真っ黒なドアがきっちりと閉まっていました。 この状況だけで、あっさり諦めます。

 

こんないい加減な判断ですが、最終的に正しかったりします。

 

今度は、現代俳句協会に行ってみます。

 

外神田だったと思うのですが、今度は事務所のドアがすこ〜し開いていたのです。 迷わず、飛び込みます。

 

あちらさんからすれば、突然入ってきて、ガラケーだのモバイルコンテンツなど、意味不明の事を話す変なヤツだと思ったでしょうね。

 

どうやら、デジタル部長と言うポストがあるそうです。 ただ、運悪く、今日は部長さん休みです。

 

この部長(先生)には後日会い、コンテンツの趣旨を説明します。 デジタル部長なんて言うと、ITっぽいですね。 でも、この部長さん70歳は余裕で超えています。

 

ワタシは俳句に興味があります!をアピールしたくて、何回か先生の会主催の句会にも参加しました。 結果的にこれが良かったです。 モバイル句会と言う、コンテンツのアイデアを貰いました。

 

当時、先生の元には、おじゃる丸からもオファーが来ていました。 何処かで聞いた様な話ですが、天下のNHKと一騎打ちです。 先生が住んでいる街まで出向き、居酒屋で呑んだりもしました。 結果的に先生はNHKを断って、私と契約を結んでくれる事になります。

 

さて、モバイルサイトに盛り込むコンテンツを考えなくてはいけません。

 

目玉は「モバイル句会」です。

 

毎月、先生に「お題」を用意してもらい、有料会員に投句して貰うのです。 集まった句は先生に評価をしてもらい、ポイントが付与されます。

 

「空手道モバ流」で知り合った技術畑の友人に今回も制作をお願いします。 彼は当時、大手ポータルサイト運営会社のエンジニアでした。

 

当時、3キャリア対応の公式サイトを制作すると、数百万円掛かる時代でした。 勿論、そんなお金がありませんから、彼には打ち合わせの際、食事(主にラーメン)をご馳走しただけでした。 二人だけで企画、サイト設計をして、3キャリア用の企画書を作り、公式サイトの審査を突破する!

 

今、Dropboxを整理していて、見つけたのは、この時の企画書なのですが、80ページ以上あります。 今では、こんな面倒くさい仕事出来ませんね。

 

結果的に無事3キャリアの審査は通過しました。 人からネタを貰った訳でなく、全くの“ゼロ”から新しいサービスを生み出すと言うのは、とても貴重な体験です。

 

これは、現在の送り出し機関の業務でも同じ事が言えます。

 

自分だけのスキルを生かして、実習生の役に立つ「何か」が作れないか? まあ、細々したものばかりですが、幾つかは制作しました。

 

私の様な人間が偉そうに言うことではありませんが、「仕事」は考える事によって楽しくなります。 与えられた仕事を指示通りやる事は大切ですが、正直あまり面白くありませんね。

 

今の仕事を何年続けられるか?分かりませんが、ちょっと足りないこの頭が動く限りは「クリエイティブの精神」を忘れずに生きたいのです。