実習生に贈る言葉。嬉しいような、心配の様な複雑な心境なのです。

実習生は、一定レベルまで日本語が上達して、在留資格が出ると日本へ行きます。 昨日は、建築関連の職種ばかり約10名の実習生が学校を後にしました。

学校で過ごす最終日は、そのままノイバイ空港から日本行きの飛行機に乗ります。 当日は、嬉しそうにソワソワした様子で、よそ行きの真っ白なシャツを着ているので「あっ!いよいよ今日行くのだな〜」とひと目で分かります。

 

一通りの準備が終わると、各教室を周り仲間たちに最後の挨拶をします。 たった、半年程度ですが、同じ釜の飯を食った仲間たちです。 涙ぐむ実習生も数多くいます。

 

最後に先生方がいる、日本で言う所の職員室にやってきます。 先生方を前にして、一列に並び「日本語」で挨拶をします。

怖〜い先生方の目が一斉に実習生に集中しますからね。 ここで間違わずに挨拶をするのが最後の試練です。

 

THUAN AN KYOTOベトナム全土から、実習生が集まってきます。

 

二人の子供を持ち、日本行きを決心した男性。

18歳になったばかりの子供のような女性。

300人もいれば、あっという間に私と会話が出来る様になる実習生も、自分が世話になる会社名が何時までも覚えられない実習生もいます。 昨日、日本へ行った実習生は、建築関連だったので、どちらかと言うと日本語に悪戦苦闘した組です。

 

彼らを見ていた痛感したのが、やはり、ある一定の年齢になると極端に「覚え」が悪くなるという事です。

35歳を超えると「ガクッ」と来ますね。

 

日本人として出来る限りの努力はしたつもりですが、日本に行った10人の中で2名ほど「大丈夫かな〜」と言う実習生がいました。

 

出来の悪い子ほど何とか・・・と言いますが、よ〜く分かります。

 

先生たちへの挨拶が終わった後、2人には個人的に話しをしました。

 

一人目は子持ちのお父さんです。 四捨五入すると40歳になるお父さんは、日本語がなかなか上達しませんでした。 補習授業を続け徹底的に私と話すと、耳が慣れてくるのか?段々と会話が出来る様になるのですが、ちょっと日数が空いてしまうと直ぐに戻ってしまうのです。

明日の朝、彼は日本にいるわけです。 今更ジタバタしても遅いわけです。

 

ちょこちょこと小手先だけで日本語を勉強したってどうにもなりません。 現場で、先輩のベトナム人や親方の言うことを注意深く聞き、一つずつ単語を覚えていくしかありません。 ただ、このお父さんはとても、真面目で努力家なのです。 私が日本語で質問を出すと、何時も真剣に聞いていました。

この姿勢で仕事に取り組めば、多少日本語が苦手でも分かって貰えるでしょう。

 

もう一人は若い男性なのですが、よく授業中に船を漕いでいました。 口をへの字に曲げている事も多かったです。 彼には、出来るだけ笑顔で過ごす事を伝えました。 日本では大変な事も多いでしょう。辛くても出来るだけ口角を上げて過ごす様に話しました。

 

内容が確実に伝わるように、近くに居合わせた先生に通訳をして貰いました。

 

先生から実習生への話しが終わると、彼は素晴らしい笑顔で頷き、私と握手をしました。 理解して貰えた様です。

 

上記の2名だけでなく、日本に行く前には、出来るだけ多くの実習生と話す様にしています。

 

これは、相当水分量が減ってきた54歳の肉体からビチビチの筋肉が詰まった肉体へのメッセージなのです。

 

まず、仕事を一生懸命頑張るのは勿論です。 決して安くは無い費用を掛けて日本に行くのです。 一家の将来を背負う事になる実習生も多いです。

 

又、日本語が好きで上達の早い実習生には、日本でも日本語の勉強を続ける様に話します。 若い彼らにとって、日本での3年間は一瞬に過ぎません。

 

彼らにとって「本番」は帰国してからなのです。 日本滞在中にN-2を取得出来れば、帰国後、日本語の教師、日系企業など給与が高い仕事に就くことが出来ます。

 

全員に必ず伝えるのは、「日本での3年間」を楽しむことです。 日本は素晴らしい国です。

 

酷暑や冬の朝の寒さには本当にビックリするのでしょう。 ただ、一斉に桜の花が散る様子や山が真っ赤になる紅葉の季節は一生の思い出として目に焼き付くはずです。

 

食べ物だって美味しいし、ビールだって最高ですね。 来年の正月には、こたつに入って簡単なおせち料理に日本酒で乾杯して欲しいです。

 

そして、必ず日本人の友達を作る! 実習生によっては、将来を左右する友達になるかもしれません。 テキストを使い一人で日本語を勉強するより、日本人の友達と外出をしなさい!と教えています。 その方が確実に役立つ日本語を習得することが出来ます。

 

今の時代、遠く離れていても、Facebookなどと通じて実習生の様子を伺うことが出来ます。

 

初詣に行った動画をアップしたり、雪に驚いたり、仲間とカフェで寛ぐ写真を見ていると、私は親心と言うか?なんというか?本当に幸せな気持ちになります。 逆に、寂しそうな表情で「孤独で寂しい・・・」と言うメッセージを見ると何ともやりきれない気持ちになります。

 

まだ、まだ、日本は寒い日が続きますが、数ヶ月経てば皆さんが先生たちから習った「桜」の季節がやってきます。

 

3年後はベトナムで再開して、日本での話しを聞かせて貰いたいのです。 ベトナムはこれから旧正月を迎えます。

 

祖国の事を懐かしく感じると思いますが、3年間頑張ってくださいね。