介護について暖かなホーチミンで考えてみる

日本では小室哲哉さんの引退について、大々的に報道されていて、会見の際に“介護”と言う単語も出てきて、メディアでも取り上げられている様ですね。

実は、私、日本に住んでいる時に、2年間ほど、社会福祉法人の職員として介護の現場で働いていた経験があります。 墨田区にある、高齢者支援総合センターです。

大規模な施設で1階がオフィス・窓口、2階が通所介護、3,4階が特別養護老人ホームになっていました。 私が担当していたのは、通所介護です。デイサービスと書いた方が判りやすいかもしれません。

 

介護に全く知識の無い方のために少し、説明すると。。。。

通所介護というのは、朝、我々スタッフが送迎車で高齢者宅までお年寄りを迎えに行き、施設で、食事、風呂、リハビリ、レクリエーションを行い夕方送り届けると言うサービスです。

当時世話になっていた方から、勧められて何となく始めた仕事なのですが、面接の為に初めて施設を訪問した時から、驚きの連続でした。

施設に入った途端に目に入ってきたのは、車椅子に乗った数人の高齢者。。。

日本で、車椅子に乗ったお年寄りは珍しくありませんが、見るからに元気のなさそうなお年寄り、シーンと静まり返ったヒヤッとしたフロア、独特の匂い。。。 今迄経験した事のない威圧的な空気感、雰囲気に、これからこの仕事を通じて始まるただならぬ毎日に“恐怖”を感じました。 ※今でもはっきりと覚えています。

 

面接と言っても、法人の理事の紹介なので、形だけです。

 

デイサービス職員の仕事は多岐にわたります。

朝礼が終わると、運行表を持って、車椅子用のリフトが付いた専用のバンで高齢者を迎えに行きます。 通常は職員二人一組で乗り込み一人は運転、一人は高齢者のサポートなのですが、私が務めて居た法人は結構、無茶をする所でドライバー一人だけでした。

車椅子であれば、ワイヤーで固定してしまうので、問題ないのですが、歩行可能な元気なお年寄りは時々、シートベルトを外して立ち上がってしまう時があります。

運転中にルームミラーに、立ち上がっているお年寄りが見えたりすると“おーっ!”と言う事になります。 急ブレーキをかけようものなら、即転倒、間違いなく骨折の大事故です。

 

又、マンションの高層階に住んでいたりする場合、部屋まで迎えに行くので、バンの中に高齢者だけの状態が発生してしまいます。

この車両だけは路肩に停車していても、レッカー移動される様な事は無いのですが、急に具合が悪くなったりする可能性もあるので常に時間との勝負です。 お迎えの時間に道路まで、出てくれている高齢者も居るのですが、真夏、真冬は身体への負担が大きいので、運行時間は分刻みです。

※時効なので、暴露をすると、担当者会議で出かけるフリをして、このバンで珈琲を飲みに行ったことがあります。

ハザードを点滅させておけば、大丈夫なのでしょうが、一応、念のために?ハッチバックを開け、ご丁寧にリフトまで下ろして車を離れました。ここまで芝居をうてば、どこから見ても、高齢者の為に一生懸命働いている中年です。(現役で働いている皆さんは真似をしない様に!)

 

さて、高齢者なのですが、結構、独居が多いのです。独居老人と言うやつですね。

家族にお父さん(お母さん)いってらっしゃーいと見送られる高齢者は幸せかもしれません。 夫婦で利用している方もいます。

 

施設でも、リハビリ、食事、おやつ、風呂、レクリエーション、排便、投薬など分単位で管理されています。

 

私が勤務していた、通所介護は確か、定員が50名〜でした。 うろ覚えなのですが、確か、1日の利用料は10,000円程度だったと思います。これ又、記憶が曖昧なのですが、利用者の負担は1割だったと思います。。。

残りの9割は墨田区の負担になります。 と言うことはウチの施設だけで1日あたり、50名×9000円=450000円にもなります。

 

墨田区は高齢者がとても多く(墨田区に限りませんね)、数え切れないほどの施設があります。 全体で考えると、1日あたりの墨田区の負担額ととんでもない金額になります。これを、東京都全体、日本全体で考えると。。。更なる超高齢化社会を迎えるこれからの日本で財源が足りるわけありませんね。

 

政府は在宅看護を推奨していますが、そもそも、昔の様に二世代、三世代で暮らしている家なんて稀ですね。

 

日本を離れて1年半経ちますが、このあたりの高齢者問題と言うのはニュース、社会で取り上げられているのでしょうかね? 確かに、オリンピックも大切です。

ただ、この問題に手を打たないと(根本的な解決は無い)日本に将来は無いと思っています。 たった、2年間でしたが、施設での経験は貴重な物となりました。人間は例外なく、誰でも歳を取り、肉体、精神とも衰え、死んでいきます。

 

まずはこの現実、人間の生死を正面から見る必要があります。

 

徴兵制度ではありませんが、一定期間、介護施設で勤務する事を義務付けた方が良いと思います。 ・・・など、勝手な事を書いてしまいました。介護のプロが見たら間違って情報かもしれませんね。

 

頭の中は彼女の事が80%位を占めていますが、残りの20%はこんな事を考えながらホーチミンで暮らしています。 さて、明日は、ここ暫く一緒に映画を見たり、食事をしている素敵な女性とデートです。 五体満足のうちに目一杯楽しまなくちゃね!